図書館戦争を読み
舞台は図書の検閲が法律によって認められ、武力行使さえも許される近未来の日本。
主人公は検閲から本を守るための図書館の組織・図書隊の隊員と、パラレルワールドのお話のため、少し一般的な恋愛小説からはずれているかもしれません。
しかし、そこに登場する人物たちは本当にどこにでもいそうな普通の人たち。
検閲との抗争が主軸のお話ではありますが、同時に展開される主人公たちの恋愛模様が良いのです。
作者さんが連ドラっぽいものを目指して書かれたものらしく、随所に月9、少女マンガ的な要素が盛り込まれています。
既に白泉社の「花とゆめCOMICS」で漫画化されていることからもわかるのではないでしょうか。
郁が昔本屋で助けてもらった「王子様」に憧れて図書隊員を目指すくだりなどは、あまりに少女マンガ過ぎて合わない人には合わないかもしれませんが、周囲の人間描写と設定が細かくされているせいか、気にせずに応援する立場で読めました。
純粋で真っ直ぐ、恋愛には初心な主人公の郁。郁の友人で、情報操作に長けていて隙がなさそうでありながらどこか不器用な柴崎。
出てくる人物たちはそれぞれに魅力的で、珍しく嫌いなキャラクターのいない小説でした。
女性にしては背が高いヒロインと、男性にしては背の低いヒーロー。
現実は背が小さくてかわいい女の子ばかりでなく、男性もみんながみんな170cm以上なわけではない。
そんな等身大の人物たちが魅力的です。
図書館戦争は「図書館戦争」「図書館内乱」「図書館危機」「図書館革命」の4冊からなるシリーズで、シリーズを追うごとに主軸である図書館を囲む状況と、主人公の恋愛が進行していきます。
私は文庫版を買ったのですが、文庫版は巻末に郁以外の登場人物を主役に置いた短編が収録されていて、これがまた「この時こんなことを考えていたのか」というのがわかって楽しいです。
シリーズ4冊で完結した後、さらに「別冊図書館戦争Ⅰ」「別冊図書館戦争Ⅱ」という後日談のお話が発売されて、これをもって本当にシリーズ終結したそうです。
こちらの別冊分は、作者さん自らが、「甘いのが苦手な方は読まない方が…」とおっしゃっているのですが、その言葉にたがわない甘さとなっています。
既刊4冊分ほどの大きな事件は起きず、それぞれのカップリングの恋愛事情が細かく書き込まれているように感じました。
甘いのが好きな私でも、「甘っ!」と言ってしまうようなところも。
ですが、ここに至るまでの各カップルの歩みを見てきた読者としては、この別冊を見逃すのはもったいないと思います。
シリーズ4冊読んだなら、別冊までぜひ味わっていただきたいです